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山梨県が世界初の成功キングサーモン×ニジマスの「富士の介」
2019年02月14日

20センチ超に成長した富士の介

 山梨県水産技術センターが世界で初めてキングサーモン(マスノスケ)とニジマスの交配を成功させた新種の養殖魚「富士の介」の試食イベントが2日、都内で開かれ、マスコミやグルメ関係者にお披露目されました。東京五輪&パラ五輪が行われる2020年の商品化を目指して、もっか県内7か所の民間養殖場で成長中。一体どんな魚なのか、紹介したいと思います。 (文・正見真一郎、写真・山梨県農 政部提供)

◆目指すは東京五輪 ’20年の初出荷

 水産庁長官が「三倍体魚等の水産生物の利用要領」を通達したのは1992(平成4)年。三倍体魚等とは「染色体の倍数化等の技術を用いて作られた魚」で、染色体数の操作だけで遺伝子自体には手を付けていないので遺伝子組み換えではないとされます。
 これを受けて2007(平成19)年、山梨県水産技術センター忍野支所はニジマスとキングサーモンの交配種の開発を開始。都道府県の水産試験場でキングサーモンの継代飼育が行われているのは山梨県しかなく、しかも当時の高橋一孝所長がサケマス研究の第一人者であったことなど条件に恵まれていました。ニジマスの雌から採卵。X染色体を2つ持つ雌のキングサーモンにホルモン処理を施して雄(通常の雄はX&Y)に性転換させて受精させ、X染色体を3つ持つ雌の三倍体魚「富士の介」を4年後に誕生させました。
 両魚の交配は世界的にも研究例がありませんでしたが、同県では大型の高級魚キングサーモンと卵数が多く養殖しやすいニジマスを掛け合わせることで「養殖に適したおいしい魚」の開発を狙ったものです。卵を持たない富士の介は、卵に栄養がいかないため肉質が安定していて、また自然界での繁殖防止が担保されています。
 その後、2016(平成28)年に水産庁から養殖利用の承認を受けました。ニジマスとマスノスケの交配種で便宜上ニジノスケなどと表記されていましたが、翌年に名前を公募。山梨らしい富士の介に決まりました。直後に県内の7養殖業者に発眼卵が配布されて試験的な養殖が始まり、3年をかけて2020年に市場に流通させる計画です。順調に育てば体長約70センチ、体重約3キロに達します。とりあえず生産量20トンを確保。先々は100トンを目指しています。
<キングサーモン(マスノスケ)> 東北沖からカリフォルニア沖の北太平洋に分布。サケ類の最大種で通常70〜100センチ最大150センチ。肉は脂肪分が多く美味で釣魚としても人気が高い。特徴は▼マス類の中で特に高級▼希少(日本で実験レベルでしか養殖されていない)▼特に大型になる▼淡水では飼いにくく、大きくならない
<ニジマス> 北米原産で、ユーラシアではカムチャツカに分布。日本には1877(明治10)年、カリフォルニア州から卵1万粒が移入された。特徴は▼養殖に適している(高い摂餌性)▼おいしい▼マス類の中で認知度が高め▼大型になる▼マス類の中では卵数が多い=異種間交配のベースとして最適なマス類
 ※両者のいいとこ取りの「養殖に適したおいしい魚」を作り出すことが掛け合わせのコンセプト。富士の介はニジマスに比べて頬などのピンク色が弱く全体的に金色がかっています。

◆“高級食材”の試食会

 山梨県のニホンジカと富士の介を甲州ワインとともにいただく試食会、「やまなしジビエ&富士の介と県産ワインのマリアージュ」が2日、東京・日本橋の「レストラン Y−wine(わいわい)」で開かれました。
 それぞれ2皿ずつ用意され、富士の介は「ヤギのミルクのムースのルーロー 〜ビーツ風味〜」と「ミ・キュイとクネル 〜モクズガニのビスクソース〜」が供されました。一緒に出てきたワインはともに2017年産で、前者が勝沼醸造さんの「アルガブランカ クラレーザ」、後者が笹一酒造さんの「シャルドネ 樽発酵」です。ともに見た目が美しく、ワインとの相性もバッチリ。前者はヤマメの卵が愛らしく、後者はとても柔らかくておいしいです。
 同店のオーナーでソムリエの田崎真也氏の説明を聞きながら、まったりした時を過ごしました。アンケート用紙に富士の介を用いたおいしい料理を提案してほしいとありましたので「すしとみそ漬け」と書きました。後であいさつされた和食店の店主も「みそ漬けがいい」と話されて、わが意を得たりと思いました。
 しかし、田崎氏にそれをお話しすると「高価な食材なので高過ぎるみそ漬けになる」というようなことを話されました。ブランド魚ならではの悩みでしょうか。

◆これから大いに期待 大型の引き楽しみに

 釣り面も担当している記者としては、当然釣魚としての富士の介が気になります。山梨県農政部花き農水産課で水産担当をされている久保島宏・課長補佐に伺うと、「現時点では食用として考えていますが…」ということでした。ただ、キングサーモンを釣るカナダツアーを旅行会社が用意しているほどで、大型マスの重さを国内で楽しみたいという釣り人の需要はあるのでは、と思います。
 山梨県小菅村の養殖業者から甲斐サーモンを仕入れている西武園フィッシングランドの広報担当課長補佐、山中英晃さんに「2027年には生産量が100トンに増えるので楽しみに待ちましょう」とメールしたところ「期待をして楽しみに待たせていただきます」と返信が来ました。

◆淡水魚養殖の条件揃いの山梨 塩焼きサイズ越えるブランド開拓へ

 山梨県は面積の約80%が山林で、ミネラルウオーターの出荷量日本一を誇るなど良い水に恵まれた淡水魚の養殖に適した地。2017(平成29)年の統計で、ニジマスの生産量は静岡、長野に次ぎ全国3位、その他マス類生産量は長野に次ぎ2位と養殖が盛んです。
 一方で2015〜17(平成27〜29)年3年間の平均で全国の都道府県庁所在地&政令指定都市の世帯あたりのマグロ消費量を比べると甲府市は静岡市に次いで2位と「マグロ好き」が分かります。さらに好景気だった平成の初めごろはアウトドア用の塩焼きサイズのニジマスが売れていましたが、近年はレジャー産業需要の減少や魚食離れなどで同県のマス類の生産量はピーク時の約半分に落ちています。
 塩焼きサイズ以外のマス類の需要の開拓が、大型ニジマス「甲斐サーモン」、さらに富士の介誕生につながりました。