「球場の差」をなくしてみると⋯? 実は「侍JAPAN級」だった福永裕基 ~前編~
本企画は株式会社DELTA協力のもと、打率や打点、防御率や勝利数のようなわかりやすい数字には表れないドラゴンズの選手たちの強みや凄さを統計学的視点から分析し、考察していく企画です。
過小評価されている選手や、わかりやすい数字には表れないがチームに大きく貢献している選手を正当に評価できるようになり、これまで以上に深くプロ野球を楽しめるようになるはずです。
シーズン開幕を前にショッキングなニュースが入ってきた。福永裕基内野手が18日のソフトバンク戦で守備でのベースカバー時に右膝を負傷したのだ。報道によれば診断は側副靭帯損傷。長期離脱は必至だ。福永は昨季111試合に出場し、.306の高打率をマーク。今季のオープン戦では主に3番を務めていた。主力打者だけにチームにとっては痛手となりそうだ。

ソフトバンク―中日 8回裏、負傷し、交代する福永㊧
だがその痛手の程度はそれほど深刻になるだろうか。確かに昨季の福永は打率3割こそクリアしたが、本塁打はわずか6本。これはセ・リーグの全打者中22位である。また、打点32はセ・リーグ28位。少なくとも他球団の主軸に比べれば明らかに迫力不足に見える。代わりがきくとまでは言えないにしても、離脱が致命傷とまでにはならないように感じるのではないだろうか。

だが、実はこの見方は福永の実力を見誤っている。というのも、これらの成績は球場の影響を考慮できていないからだ。ご存じの通り中日が本拠地とするバンテリンドームはセ・リーグで最も打者不利な球場である。グラウンドが広い上、高いフェンスが打球を阻む。ほかの球場では本塁打や長打になる打球がフライアウトになってしまうのだ。つまり、福永の打撃成績は不利な環境の影響を受けたものであることを考慮する必要がある。
ではこの球場の差による有利・不利を均すと見え方はどう変わるだろうか。今回はwRC+という指標を使おう。wRC+とは打者の1打席あたりの総合的な攻撃力を示す指標だ。基準を100としており、それよりも大きければリーグ平均よりも優秀、小さければ劣っていることを意味する。たとえばwRC+110の打者は、リーグの平均的な打者よりも1.1倍攻撃力が優れていることを示す。そしてこのwRC+には球場の有利・不利を均す補正が組み込まれている。このwRC+を使えば、中日所属でも他球団の打者とフラットに成績を比較できるというわけだ。

石伊雄太選手 #9 前編もっと知りたい!